スコッチの中で最も華やかで、バランスに優れた名酒が揃っていると言われているスペイサイドのウイスキー。
アイラ島のウイスキーとは対極の風味と言われるスペイサイド地域のウイスキーは、世界のシングルモルト売上の1位から3位まで揃う、まさにスコッチの本場中の本場です。
そんなスペイサイドと蒸溜所について紹介していきます。
スペイサイドとは
スペイサイドは、スコットランドにある地域の1つで、面積は東京都と同じぐらいの大きさです。
世界一のウイスキー生産地で、スコットランドに110ある蒸溜所のうちの約半数にあたる54の蒸留所がひしめき合っています。
en.wikipedia.org By Drawn by User:Briangotts as Image:Scotch regions.png and converted to SVG by w:User:Interiot. – Erskine, Kevin. The Instant Expert’s Guide to Single Malt Scotch. Doceon Press, 2005.Jackson, Michael. Complete Guide to Single Malt Scotch. Running Press, 2004.Wilson, Neil. The Island Whiskey Trail. Glasgow: Angel’s Share, 2003., CC BY-SA 3.0, Link
ハイランド地方の中心に位置し、正確にはハイランドの一部でもありますが、ウイスキーの地域区分を分ける際は、スペイサイド地域としてハイランドから独立して説明されることが多いです。
スペイサイドにあるものの、ハイランドウイスキーを名乗る蒸溜所もあります。
スペイサイドの蒸溜所
スペイサイドは、7つの地区に分けられ、それぞれに蒸溜所が分布していますが、主にスペイ川に沿って存在しています。
蒸溜所が密集していますね。
スコッチの本場中の本場は伊達ではありません。
すべての蒸留所を紹介していくと、非常に長くなってしまうので、日本でも比較的有名な蒸溜所をピックアップして紹介していきます。
ザ・グレンリベット蒸溜所(The Glenlivet)
ja.wikipedia.org By Kkonstan – Own work, CC 表示 3.0, Link
グレンリベットとは静かなる谷という意味です。
グレンリベットは政府公認の第1号蒸溜所であり、「すべてのシングルモルトはここから始まった」という謳い文句でも知られています。
長らく世界のシングルモルトウイスキーの売上では第2位でしたが、2014年に第1位に登りつめました。
代表的なウイスキーは、グレンリベット12年
グレンフィディック蒸溜所(Glenfiddich)
en.wikipedia.org By Richard Harvey – Own work, CC BY-SA 3.0, Link
グレンフィディックは、鹿の谷という意味です。
2013年までシングルモルトウイスキーで世界最大の売上を誇っていましたが、2014年にグレンリベットにその座を明け渡し、現在は世界第2位のシングルモルトウイスキーです。
製法は伝統的ですが、ウイスキーの蒸溜に使うポットスチルは、スコットランド最多の設備です。
代表的なウイスキーは、グレンフィディック12年
マッカラン蒸溜所(Macallan)
en.wikipedia.org By Richard Harvey – Own work, CC BY-SA 3.0, Link
マッカランの名前は、聞いたことある人は多いのではないでしょうか。
シングルモルトのロールスロイスとも呼ばれるマッカランは、インテリジェンス溢れる広告戦略も相まってシングルモルト世界第3位の売上を誇り、日本でも人気のスコッチです。
スペイサイド最小のポットスチルを使い、熟成樽はほぼすべてスパニッシュオークのシェリー樽です。
シェリーは近年、価格が高くなっており、マッカランはシェリー樽熟成にこだわる数少ない蒸留所です。
代表的なウイスキーは、ザ・マッカラン12年ファインオーク
グレンファークラス蒸溜所(Glenfarclas)
グレンファークラスは、緑の草の生い茂る谷間という意味。
グレンフィディックと同じく今でもファミリー経営を続ける数少ない蒸溜所です。
シェリー樽にこだわっている点はマッカランと同じですが、グレンファークラスはスパニッシュオーク以外のシェリー樽も使い、ホワイトオーク樽とも混合で使用します。
代表的なウイスキーは、グレンファークラス12年
ベンリアック蒸溜所(Benriach)
en.wikipedia.org By Christopher Gillan, CC BY-SA 2.0, Link
ベンリアックは、灰色がかった山という意味。
かつてシングルモルトウイスキーを出さず、ブレンデッドウイスキーの原酒として利用されていましたが、運営会社が変わり、2004年以降にシングルモルトとしてベンリアックブランドのウイスキーを出すようになりました。
運営会社のベンリアックディスティラリーは、グレンドロナックやグレングラッサという東ハイランド蒸溜所も所有しています。
甘い麦芽と熟した果実のような味わいのウイスキーを生産している蒸溜所です。
代表的なウイスキーは、ベンリアック12年
ロングモーン蒸溜所(Longmorn)
ロングモーンは、聖人の地という意味。修道院のチャベル跡地と言われています。
ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝氏が、1919年にウイスキー造りの修行をさせてもらった蒸溜所の1つです。
そう考えると、ロングモーン蒸溜所は日本のウイスキーの原点の1つとも言えますね。
代表的なウイスキーは、ロングモーン16年
グレングラント蒸溜所(Glen Grant)
en.wikipedia.org By S8z11 – Own work, CC BY-SA 3.0, Link
グレングラントは、ジェームズとジョンのグラント兄弟が建てた蒸溜所。
イタリアでは、シングルモルトといえばグレングラントと言われるぐらいで、シングルモルトのイタリア売上No1を誇ります。
長い間、シーバスリーガルの原酒の1つでしたが、2006年にイタリアの会社であるカンパリ社の所有となりました。
代表的なウイスキーは、グレングラント10年
グレンロセス蒸溜所(Glenrothes)
グレンロセスは、フルーティーでエレガントな味わいというスペイサイドを体現したようなウイスキーです。
ブレンデッドウイスキーの核として重宝されています。
丸みを帯びたボトルは、ブレンダーがテイスティング用に使用するサンプルボトルをかたどったものです。
代表的なウイスキーは、グレンロセス セレクトリザーブ
スコッチの王道 スペイサイドと蒸溜所のまとめ
東京都と同じ面積の中に、54の蒸溜所があるスペイサイドはまさにスコッチ造りの中心地です。
シングルモルトとしては世界でもトップの売上をほこるブランドを輩出し、多くのブレンデッドウイスキーの原酒としても活用されているスペイサイド。
アイラ島と並んで、一度は訪れてみたい地域といえますね。
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