【BAR訪問記 #9】Bar CROSS(バー クロス)- 池袋西口公園近くの地下にあるウイスキー好きの勘所をとらえた秘密基地

飲み会を終えて居酒屋を出たとき。大事な接待を終えて一息つきたいとき。思索にふけりたいとき。今夜の自分時間の供となる1杯、どこで過ごそうか。
止まり木となる場所に迷ったとき、HIDEOUT CLUBアプリが道標になる。アプリを起動させれば自分のいる周辺のバーがすぐに検索できるのだ。プレミアム会員になると毎日1杯無料のウェルカムサービスを受けることも可能だ。

どこにいようと飲みたい呑助にとって、これほどの強力なコンパスを使わない手はない。さっそく未知のバーを探索してみよう。

第9回 BAR CROSS(池袋)


池袋駅西口を下り、東京芸術劇場を左手に見ながら直進。身体が寒風にさらされ、必然的に足早になってしまう。5分と少し歩くと、右手にほの明るいビルが見えてくる。クラブやライブバーが入るビルの地下1階、いちばん奥まった所に、ウイスキー好きがひそやかに集まる”BAR CROSS”がある。

扉を開けると、横一直線のカウンターが目に飛び込んでくる。その向こう側に立つのがオーナーバーテンダーの井手尾浩司さん。店内には先客の男性が二人、カウンターの端と中央でリラックスして飲んでいる。

奥の席に通してもらい、さっそくHIDEOUT CLUBのアプリを起動。ウェルカムドリンクは『デュワーズホワイトラベル(1990年代流通)』だ。画面の「ワンショット30mlで提供致します」という記述につられたわけではないが、ここはストレートでいただく。

井手尾さんに挨拶しつつ、さっそくこの1杯について水を向ける。
デュワーズやそのキーモルトの「アバフェルディ」の現行品ならたくさん飲みましたけど、古いボトルは今日初めて見ました。

「オールドのほうが現在のものよりもモルト比率が高く、甘いんですよね。ウイスキーはちょっとした流行りですけど、オールドにはその銘柄固有の品質をより感じていただけるのでは。そのうえで1杯目には、どんな方でも入りやすいようにブレンデッドにしています」

「今日はデュワーズですが、先月はブラック&ホワイトをお出ししていたんですよ」とその隣のボトルを示した井手尾さん。シブいチョイスで思わずうれしくなる。

確かにスコッチ市場においてシングルモルトウイスキーが特に過熱している感はある。
だけどブレンデッドだって素晴らしいのだ。

そんな話をしながら、2杯目の相談を。デュワーズ美味しかったなー、この甘め路線を続けてみたいです、というリクエストに

「これなんかどうですか?」と井手尾さんが指したバックバーには『エドラダワー』のオールドボトルが。

「まるでホワイトチョコみたいですよ。味にはキャラメルっぽさが出てます」

1980年代に流通したものだそうで、井手尾さんが資料として当時の『世界の名酒事典』を引っ張り出して見せてくれた。歴史をひもときながらウマウマするひととき、たまらない。

この変わった風味。アタックで一瞬ヒネた感じが出ましたけど、飲んでるうちに井手尾さんの仰ることがわかる。いやぁ面白い。

ふと周りを見ると、二人の男性客もそれぞれ井手尾さんとウイスキー談義に花を咲かせている。

バックバーにはザ・スコッチ・モルト・ウイスキー・ソサエティ(SMWS)やオールド、ボトラーズなど、見かけないボトルが整然と並んでいる。井手尾さんがウイスキーに開眼したのは、1960年代に流通していた良質のオフィシャルボトルが飲めたころ。旧UD社(現ディアジオ)のクラシックモルト・シリーズ6種類がリリースされた1988年から、ほどなくしての話だ。

ゆえに「長熟ものとオールドをバランスよく揃えています」となるのは、井手尾さんにすればごく自然な流れなのだろう。ネットオークションもチェックし、これはというオールドボトルを見つければ競り落とすという。

客にも気張らずに同じ体験をしてもらいたい。井手尾さんのそんな思いを裏付ける場面があった。それは何か。よく見ると、目の前に置かれたボトルの最下部には、目立たないながらも”A2″とか”C”とか、謎のアルファベットと算用数字の記号が記されている。

実はこれ、ワンショット価格を示したもの。アルファベットは「数字の最初の位」を、その後に記された数字は「百の位」を表すそうだ。最初のドリンク『デュワーズ』は”A2″だから1,200円、この『エドラダワー』は”C”だから3,000円というわけだ。珍しいボトルを飲み比べたいという人も珍しくなく、ハーフショット(半額)のオーダーも可能。ぼくも気軽にハーフショットでお願いすることができた。

「お客様からお値段を聞かれたとき、ボトルを取り上げて値段を確認するのが苦手なんです(笑)」とタネを明かしてくれた井手尾さん。

いやいや、お財布が気になる呑助にとってはうれしい配慮だ。あからさまにお値段って聞きづらいし。ちなみにいちばんお高いのは『ザ・マッカラン グランレゼルバ18年』で、お値段は”J”。思わず指折り数えてしまった。

井手尾さんがここまで呑助に共感するのには、自身のストーリーが背景にある。もともと学生時代にアルバイトで2軒のBARで働き、そのときに自分でBARを開こうと決意。卒業後、洋酒部門が強い信濃屋食品に入社し、黎明期のネット通販を軌道に乗せて6年で退職。さらにそこから六本木のBARで働き、学生時代に得たバーテンダーとしての感覚を取り戻したという。

「そうした体験が今に生きていますし、サラリーマンの気持ちがわかるんですよね」

この井手尾さんのダンディな風貌とどこまでも優しい視線に、男女問わずやられてしまうだろうなと思いながら、3杯目の候補をお願いする。

出してくれたのは、あまじょっぱい『スプリングバンク』と、井手尾さんのルーツつながりで『グレンタレット信濃屋限定ボトル』、ブドウ系の甘さが立つ『グレンキンチー20年』。迷った末に、長熟のブランデーカスクという珍しい『グレンキンチー20年』を選んでみた。

「飲んでいると麦感が出て、グレンキンチーってわかりますよ」という井手尾さんの解説に、珍しく時間をじっくりかけて飲む。

気がつくと僕以外の男性客が入れ替わっていた。

地下の奥まった場所に知る人ぞ知る宝の山と、その守り人。呑助の心をくすぐりまくる秘密基地を知った快感。
あれほど寒風を感じた行きの道が、帰りには心地よい夜風に転じたのは言うまでもない。

本日の飲んだお酒

デュワーズホワイトラベル1990年代流通(ウェルカムドリンク)
エドラダワー オールドボトル ハーフ
グレンキンチー20年 ハーフ
計2,400円

本日の飲んだお店

BAR CROSS
東京都豊島区西池袋3-29-3 梅本ビルB1F [地図]
TEL:03-6914-0278
営業時間:18:00~2:00
定休日:日曜日



ウェルカムドリンクとは?

月額1500円のHIDEOUT CLUBプレミアム会員特典の1つで毎日1杯BARで無料サービスしてもらえる機能。
HIDEOUT CLUBスタッフに厳選された東京都内のBAR107店舗で利用することが出来ます。

詳しい説明は以下の記事から。
対応BAR100店突破!HIDEOUT CLUBプレミアム会員限定ドリンクパスポートの使い方をご紹介!
 https://mg.hideoutclub.jp/2515

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