【ウイスキー入門】イチローズモルト・ジャパニーズウイスキーの新たな潮流のその魅力。

世界5大ウイスキーであるジャパニーズウイスキー、その歴史は他の4地域のウイスキーに比べて浅いですが、高品質なウイスキーで評価が高まり、世界から注目され、輸出量も増大しています。そして、ジャパニーズウイスキーは新時代を迎えています。ここ数年、日本に新しい蒸溜所が次々と生まれてきています。この新時代には、先駆的なウイスキーがあります。それはIchiro’s Malt(イチローズモルト)です。本記事では、イチローズモルトについて紹介したいと思います。

イチローズモルトとは?

イチローズモルトは、肥土伊知郎(あくといちろう)氏が創立したベンチャーウイスキー社のウイスキーブランドです。その中には、カードシリーズ、ニューボーン、リーフラベルシリーズや秩父シリーズなどがあります。これらのウイスキーは様々なコンテストで多くの賞を受賞しています。

イチローズモルトには主に二つの蒸溜所、羽生蒸溜所と秩父蒸溜所で製造されたウイスキーが関わっています。それらの関係を説明したいと思います。

羽生蒸溜所とベンチャーウイスキーの設立

ブランド名のイチローは、肥土伊知郎氏の名前が由来しています。肥土氏は東京農業大学の醸造学科を卒業し、サントリーに入社し、その後、父の経営する東亜酒造に入社します。東亜酒造は肥土氏の祖父が創立者である埼玉県羽生市の造り酒屋で、当時は羽生蒸溜所を運営しており、1980年代からスコッチ式のウイスキーの蒸溜を行っていました。東亜酒造は、1990年代後半に経営が難航します。

肥土氏は2000年に、実家の経営を引き継ぎますが、2004年に羽生蒸溜所が売却されることになります。その際に、羽生蒸溜所の約400樽のウイスキー原酒が破棄される危機に陥りましたが、なんとか福島の「笹の川酒造」に原酒を預かってもらえることになりました。その年の9月にベンチャーウイスキー社を設立し、2005年5月に初ボトリングがされ、羽生蒸溜所の原酒を元にイチローズモルトが生まれました。

笹の川酒造で最初に造ったウイスキー600本は、既成のウイスキーボトルがなかったので、ワインボトルにボトリングされました。それらを販売するため、自らおよそ2000軒のバーを巡って営業しにいって取引先の酒屋を紹介してもらえるようにお願いしたそうです。

秩父蒸溜所について


日本には、山崎、白州、余市などの有名なウイスキーの蒸溜所がありますが、その中で、近年、特に注目されているのが秩父蒸溜所です。秩父蒸溜所はベンチャーウイスキー社によって2007年に埼玉県秩父市に建設されました。日本では20年ぶりの新蒸溜所の誕生と言われています。秩父蒸溜所では、2008年2月に生産を開始し、2008年には、数ヶ月の樽熟成をしたイチローズモルト・ニューボーンシリーズをリリースしました。3年の樽熟成を経て、2011年にシングルモルト、秩父ザ・ファーストを発売しています。
秩父蒸溜所は、スコッチの造り方を踏襲し、8つの発酵槽と2つの蒸溜器を持つ、年間生産量9万リットルという小規模の蒸溜所です。秩父蒸溜所の大きな特徴として、ほとんどの工程が手作業、発酵槽がミズナラ、100%秩父産に挑戦、の3つがあります。

ウイスキー造りは、製麦(モルティング)、糖化(マッシング)、発酵(ファーメンテーション)、蒸留(ディスティレーション)、樽熟成(マチュレーション)、混和(ブレンディング)、瓶詰め(ボトリング)という工程があります。秩父蒸溜所ではこれらの工程を全て行っています。熟成樽を自社でつくることや、ボトリングだけでなくラベル貼りまでも蒸溜所内で行っています。近年では、フロアモルティングという伝統的な製麦法にも取り組んでいます。

秩父蒸溜所では、発酵槽にミズナラを使っています。ミズナラは日本産のオーク(ナラの総称)であり、北海道でとれる上質なものはジャパニーズオークと言われ、オリエンタルな香りがあり、ジャパニーズウイスキーでは熟成樽に使われています。そのミズナラを発酵槽に使用している蒸溜所は非常に珍しいです。

また、秩父蒸溜所では、地元の秩父産の原料だけを使ったウイスキー造りを目指していて、秩父の農家に大麦栽培を依頼し、麦芽も自社で作ることを行っています。秩父産のミズナラを使った熟成樽を研究していて、さらに、今後は麦芽の乾燥に使うピート(泥炭)も地元でとれるものを使用する計画を立てています。

代表ボトルの紹介

カードシリーズ

カードシリーズは、羽生蒸留所の原酒のシングルカスク(1つの樽からボトリングされたもの)シリーズで、世界から注目されるきっかけになったボトルです。トランプのカードと同じ全54種類(ジョーカーが2枚)あります。最初は2005年に「イチローズモルト1988 キング・オブ・ダイヤモンズ」がリリースされ、シリーズ最後は2014年にジョーカーの2本がリリースされ全54本が揃いました。

リーフラベルシリーズ


リーフラベルシリーズは、ミズナラの葉をかたどったラベルのついたイチローズモルトの定番品です。ダブルディスティラリーズ、MWR、ワインウッドリザーブの三種類とブレンデッドのモルト&グレーンがあります。定番商品ですが、生産量が少ないため品薄状態が続いています。
ダブルディスティラリーズは、二つの蒸溜所という意味で、羽生蒸溜所と秩父蒸溜所のモルト原酒を使って、作られています。2009年からリリースされています。MWRは、ミズナラ・ウッド・リザーブのことで、ミズナラ木桶で後熟させています。ワインウッドリザーブは赤ワイン樽で後熟されています。どちらも2010年からリリースされています。モルト&グレーンは、世界5大生産国で作られた原酒がブレンドされており、ブレンディングの技術が詰まったボトルです。2011年からリリースされています。

シングルモルト「秩父」シリーズ


2008年から3年熟成され、2011年にザ・ファーストがリリースされました。
2011年以降、毎年1~4種類ずつリリースされています。全て数千本程度の限定発売なので、発売してすぐに売り切れることが多いです。

海外のイチローズモルトに対する評価


これまでも海外のコンテストで受賞を繰り返してきたイチローズモルト。
2007年に、英国のウイスキー専門誌「ウイスキーマガジン」のジャパニーズモルト特集でゴールデンアワードを受賞。2012年には秩父蒸溜所での最初のモルトウイスキーである「秩父 ザ・ファースト」がジャパニーズウイスキー・オブ・ザ・イヤーを受賞。
2017年には「ワールドウイスキーアワード」のシングルカスク部門で『イチローズモルト秩父ウイスキー祭2017』が世界一に輝きました。

参考記事

世界一となった「イチローズモルト秩父ウイスキー祭2017」。都内で飲めるお店は?
 ※2017年4月の記事のため、掲載のバーでどのイチローズモルトが飲めるかは事前にお店にご確認ください。

毎年開かれる、秩父ウイスキー祭

埼玉県内外のバーテンダーが主催するウイスキーイベントが秩父ウイスキー祭です。
秩父神社エリアを中心に行われるこのお祭りはお客さんも県内外から集まり、非常に盛況です。
ここ数年はチケットは毎年完売。

様々なウイスキーを求めて、多くのウイスキーファンが駆けつけます。
イチローズモルトを生産している秩父蒸溜所も、このお祭りを盛り上げるべく、全面協力。
毎年限定ボトルを販売し、お祭前日には普段は一般見学ができない蒸溜所見学ツアーも開催しています。

ちなみに限定ボトルは、あまりの人気ゆえに抽選販売となっています。
そして前述した通り、2017年に販売された秩父ウイスキー祭向けのボトル『イチローズモルト 秩父ウイスキー祭2017』が世界一のボトルとして受賞されたことも記憶に新しいです。

秩父ウイスキー祭のFacebookページ

最後に

ベンチャーウイスキー社では、今後100%地元産のウイスキー造りを目指すなど、独創的な試みを行っています。この新たな試みがウイスキーとして世に出されるまで数年がかかります。今後もイチローズモルト目が離せません。

また、第二・第三のイチローズモルトを目指して、日本中で新しいウイスキー蒸溜所の稼働が始まっています。
それらのウイスキーもこれから要注目です。